江戸時代の江戸庶民の旅といえば、寺社への参詣と、箱根などでの湯治。
そんな時代に、江の島詣でと大山参詣はセットで楽しまれていました。
これに箱根での湯治と箱根権現参詣を加えれば、現代にも通用する魅力あふれるプランとなります。
江戸庶民が目ざした「大山詣で」は、丹沢・大山にある石尊大権現への参詣。
明治の神仏分離で現在は、大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)、雨降山大山寺に分かれています。
大山ケーブルカー(大山観光電鉄)の大山ケーブル駅から続く参道両側には宿坊や土産屋がずらりと並んでいます。
宿坊は、今や豆腐料理が名物の料理旅館に変身しています。
そんななかで、400年以上の歴史を誇る宿坊(旅館)が東学坊。熊野神社の神紋、さらにはサッカー日本代表のエンブレムでもある八咫烏(やたがらす)が坊印という歴史ある宿坊です。
そんな、東学坊の前に1軒の小さな豆腐屋を発見。
実はこの豆腐屋、「東学坊湧水工房」と看板にあるとおり、東学坊の直営。主人の相原琢也さんは、東学坊の19代目です。
「もともと、東学坊で出す豆腐や湯葉が人気で、分けてくださいというお客様が多かったんです。ですが、吟味した原料を確保することができなくて。ようやく原料の確保に目処が立ったので平成16年に豆腐屋を出したんです」と相原さん。
取材班が注目したのは、店内で気軽に豆腐が味わえる点。参道には旅館、食堂、土産屋がズラリと軒を並べていますが、豆腐5品1500円〜なんて、協定料金のような看板を見るだけで、豆腐だけを手軽に味わえる店が皆無なのです。
「うちは豆腐店としては一番の後発ですから」と相原さんは謙遜するが、そのこだわりたるや、驚くばかり。
店先に「冷や奴368円」と架かった札を見て、思わず、注文してみると、
主人の相原さん、おもむろに鰹を削りだした。
「本場・山川の本枯節です」。
スーパーなどで売られる鰹節はカビ付け前の荒節を削ったもの。本枯節は、半年ほど熟成させ、カビ付けがなされた本物なのです。
テーブルに大きな冷や奴を運んだ相原さん、こんなアドバイスを。
「まずは何も付けないで、そのまま食べてみてください。次にミネラルたっぷりの宮古島の雪塩をかけて。最後に鰹節と出しで・・・」
何から何までこだわりを見せる相原さん。これで368円は安い、安い。
まさに取材班が探している「心豊かな旅」(消費の旅のアンチテーゼとして)がこの豆腐には天然にがりとともに凝縮されています。
冷や奴という表示の横には「アンニン豆腐」という札も。
「この店、自分ひとりで切り盛りしているんで、今日はつくっていないんです。朝7時から豆腐を仕込み、そのあと店番ですから」と苦笑いの相原さんです。
江戸庶民の「物見遊山」の原点ともいえる、丹沢大山と江の島。高尾山の大ブームの余波で、大山を訪れる人も増えているそうですが、宿坊が伝える伝統の豆腐を味わえば、旅にも奥行きが生まれます。
駐車場は、店の横に1台。時間が許せば、「東学坊」でミニ懐石2100円などをいただきましょう。豆腐は、当然、東学坊湧水工房製ですから。
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2012年09月09日
丹沢・大山でおいしい豆腐を発見(東学坊湧水工房)
posted by シマウマ-クラブ at 11:14| 神奈川のおすすめ