2013年11月07日

坐来大分で「世界農業遺産」認定記念イベントを開催(1) 火の国くまもとのイタリアンシェフは熱かった!

2013年5月に石川県七尾市で開かれた国連食糧農業機関(FAO)の国際会議。ここで熊本県阿蘇大分県国東半島・宇佐地域が、「世界農業遺産」(GIAHS:ジアス)に認定されました。先の2011年6月に日本では石川県能登新潟県佐渡の里山などが認定され、今年で第4回。ちなみに熊本・大分とともに、静岡・掛川の茶草場農法も選ばれており、いずれもすばらしい農業景観が保たれています。

今回はこれを記念して料理マスターズサポーターズ倶楽部が主催した「シェフズキッチン特別編 第4回世界農業遺産認定記念」PRイベントに参加。東京銀座にある坐来大分の料理長・梅原陣之輔さんと、熊本市街に店を構えるリストランテ・ミヤモトの宮本健真さんにより、それぞれの地元でもある大分・国東エリアと熊本・阿蘇の素材を用いた料理を試食。

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料理マスターズ受賞者でもある、大分県出身の梅原陣之輔さん(左)と熊本県出身の宮本健真さん(右)
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シェフズ・キッチンのイベントで当日供された特別料理






まずは試食の前に、簡単なレクチャー。正直「世界農業遺産とはなんぞや?」というレベルで誠に申し訳ないのですが、参加された方々の熱いお話をお聞きしているうちにぐいぐい引き込まれ、遅ればせながら理解が深まりました。

農林水産省によれば「近代化が進む中で失われつつある伝統的な農業・農法、生物多様性が守られた土地利用、農村文化、土地景観などを「地域システム」として一体的に維持保全し、次世代へ継承していくことを目的にスタート」し「おもに途上国に向けた支援策」でした。先進国である日本で、能登や佐渡がその認定を受けたのは異例だったことがわかります。

伝統的な農業や土地の利用法、景観の保全だけでなく、生態系を損なわず、その土地に伝わる神事・風習、文化的背景も含めた農業分野での持続的な利用、取り組みが認められた地域、というわけです。

また今回腕をふるって下さったお2人は、農林水産省により2010年に始まった料理人顕彰制度「料理マスターズ」の第2回受賞者でもあります。この制度も、今回初めて知ったぐらいで実に恐縮ですが、受賞されている方々は札幌モリエールの中道さんや神宮前ル・ゴロワの大塚さん、I岡アル・ケッチァーノの奥田さん、箱根オー・ミラドーの勝又さんなど、いずれも地方食材に強い思い入れがあり今や権威的存在。すごい賞なんですね(O_O)

こちらも維持継続という観点から、初回にブロンズ賞を授与(最大8名)。その受賞者のうち5年以上の功績が認められればシルバー賞(最大5名)に、さらに5年後にはゴールド賞(最大3名)と、徐々にステップアップするという仕組み。

で、そんな蒼々たるメンバーのなかに、今回料理を作って下さった梅原さんと宮本さんがいらっしゃるわけです。とくに熊本の宮本さんは、1975年生まれの38歳。受賞当時は36歳と、料理界のお歴々のなかでは大変にお若い。

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イベント用の試食を調理する宮本健真シェフ


「これはミシュランみたいなものではなく、第一次産業と提携しておいしいものを提供する料理人に与えられる賞。それも1回もらったら終わりでなく、継続した取り組みを評価するシステム。ちょうど7年後(2020年)の東京オリンピックの年に、最初のゴールド賞が出るわけです」とは、宮本さんの解説。

しかも5年ごとのタームで料理人の精査・再評価を行なうわけです。これは長丁場。一朝一夕にはムリなお話。日頃から地元の生産者と深く付き合い、相互の信頼関係がなければ成り立たない話ですから、世界農業遺産の理念のひとつ、持続的な取り組みという点にもリンク。つまり両者共に、維持継続というのがミソ。

その宮本さん、なんと19歳で単身イタリアに渡り、フィレンツェ郊外のミシュラン2つ星「ラ・テンザ・ロッサ」をはじめ、イタリアの最北・オーストリア国境近くに位置するトレンティーノ=アルト・アディジェの名店でも修業したという強者。そんな吸収力抜群の時期に、イタリアのどっぷりと濃ゆい「ザ・地方料理」を体感した人物。末恐ろしすぎw

そして帰国後は東京など大都市圏を経ずに実家の山鹿、次いで熊本中心部で開業。こんな伝統文化が息づく環境に身を置いていたら、スローフードなんていわずもがな。さぞかし食と農業に対してのアンテナが高かったのでは? ましてや国連食糧農業機関(FAO)の本部はローマだしと水を向けると、実は色々と話が違っていた。料理マスターズに関しては、ある日突然店の常連さんから応募の打診があったとのこと。

宮本さんは、その時初めてこの常連さんが熊本県庁のお役人だと知ったのだとか。周囲がまだ若すぎるという理由で難色を示すなか、彼の推薦理由は「これだけ幅広く生産者のことを知っている料理人は、他にはいない」。うーん、見てる人は見てる。

その若さゆえの推進力か、阿蘇が世界農業遺産(GIAHS)の認定を勝ち取る過程においても多大なる貢献をしています。というか、実は宮本さんが言い出しっぺらしい。ある日ニュースを見てこれだ! と思い、それからGIAHSに関する膨大な資料を読み込み、その申請と評価・研究に携わる中心人物である、国連大学の武内副学長に会いたい! と直談判。

当初は懇意の生産者などとともに研究会を立ち上げ、民間レベルで様々な勉強会を幾度となく繰り返していた。やがてそれが知事にも認められ、県をあげてのバップアップ体制となった……。

この瞬間、頭の中に「情熱大陸」のテーマが。もはや料理人の枠を越えてる!? 

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GIAHS全般の説明をよどみなくやってのける宮本シェフ


宮本さんいわく「阿蘇の草原は2万3000haもあり、今も伝統農法が維持されている」「火山のなかに人が5万人も住んでいるなんて世界中見渡してもありえない」「こんなに噴火が多いのに、なぜ脈々と人は住み続けてきたのだろう」「1級河川の水源が福岡、大分を含め、約240万人の人の生活を支えているんです」「農業には国土保全の目的もある」「日本の農業は伝統行事や神事、文化とも非常に密接な関係にある」

食材と食文化ならいざ知らず、現役の若い料理人で、これだけ阿蘇の農業やその文化的背景、生態系や地理歴史に数字を交えて表情豊かに語れる人は、あまりいないのではあるまいか。立て板に水のプレゼン能力は、お見事というほかない。しかも言うだけでなく、行動力、推進力ありすぎデス。
(つづく)



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posted by シマウマ-クラブ at 17:08| 九州のおすすめ