2013年11月08日

坐来大分で「世界農業遺産」認定記念イベントを開催(2) 阿蘇の野焼きとは?

熊本県では「阿蘇の草原の維持と持続的農業」が「世界農業遺産」(GIAHS:ジアス)で認定されています。そのキーワードは「野焼き」と「伝統農業による草原の維持」。なにやら難しそうですが、阿蘇ではなんと千年も前から脈々と続いた営み。

すでに平安時代に官営の牧(現在の国営牧場)があった阿蘇谷ですが、実は近年の科学調査(土中の植物珪酸体分析)により、1万3000年前から現代にいたるまでの地層中に、ススキ属のものが多量に検出。今も変わらぬ姿を見せる阿蘇の草原は、まさに「阿蘇谷の原風景」という事実がわかってきました。

阿蘇草千里.jpg

雨の後には巨大な池も出現する阿蘇の草原風景のシンボル・草千里

草原は、野焼きされなければススキが衰退することから、なんと阿蘇では1万年もの昔から野焼きが行なわれてきたと推測されます。つまり我々がいま目にする阿蘇の草原は、太古からの「原風景」でもあり、おもに農畜産業のため毎年火入れをし、連綿と維持管理し続けてきた「人為的な自然」でもあるわけです。




宮本シェフも「野焼きと焼畑の違いは、ずっと土壌消毒を行なう形の“焼畑”とは異なり、一瞬にして焼くこと。だから地下にいる種や幼虫が死なず、何万年前もの化石が残る」「阿蘇の草原は自然のままの姿ではなく、野焼きによって保たれてきた。実はそのまま放っておくと森林化、あるいはやぶ化してしまうのです。普通は砂漠化しますが、日本はモンスーン気候なので大丈夫なんです」と解説。

ヒゴタイ.jpg

環境省の絶滅危惧種にも指定されるキク科の多年草、ヒゴタイ。原産は中国・朝鮮で大陸由来ということから、氷河期時代の生き残りともいえる。阿蘇北東に位置する産山村(うぶやまむら)にはこのヒゴタイ公園があり、例年8月から9月中旬に約5万本もの花を咲かせる


だからこれだけ野焼きを繰り返しても、オオルリシジミやヒゴタイなど、草原性の絶滅危惧種、阿蘇の固有種が失われず、今日でも阿蘇谷の原風景が守られてきたわけです。宮本さんが「阿蘇は日本最大の(生物多様性の)ホットスポットでもあるんです」と語るのも、むべなるかな。
(つづく)

阿蘇野焼き風景2.jpg

野焼きが行なわれるのは毎年2月末から3月の春先。大変な危険を伴う作業で、熟練の技が求められるが、近年では後継者不足ということもあり、地元の集落だけでなく全国から野焼きボランティアも参加。4月に阿蘇を訪れれば一面真っ黒の草原という異色の光景を目にすることになる。5月から6月にかけては緑が萌える季節。この時期放牧も行なわれ、秋には採草のため草刈り作業を実施。これを干し草にして牛馬の飼料や高原野菜などの堆肥にするという、阿蘇ならではの農業サイクル

阿蘇神社火振り神事.jpg

阿蘇市一宮の阿蘇神社で行なわれる「火振り神事」。3月の卯の期間の申の日に、参道で姫神を待って火を振る神事(国の重要無形民俗文化財)で、阿蘇の火まつりのひとつ。阿蘇神社は、その創建が神代に遡ると伝わる古社。外輪山に囲まれた阿蘇カルデラ湖を、外輪山を蹴破って農地に変えたと伝えられる阿蘇開拓の神、健磐龍命(たけいわたつのみこと)などを祀るが、阿蘇山中岳火口近くにある阿蘇山上神社は、その奥宮。平安初期から、神霊池 (阿蘇山の噴火口)に異変があるときには祈祷が行なわれてきた。また国造神社(くにつくりじんじゃ)は北宮と呼ばれ、奥宮(中岳)〜阿蘇神社(本宮)〜国造神社(北宮)はほぼ直線で結ばれる。この国造神社の「御田(おんだ)祭り」は年々の豊作を祈る農耕祭事で、阿蘇の田園風景の中を進む神幸行列は、阿蘇谷における夏の風物詩。まさに火と水、農業を司る神に祈る伝統行事も、この地に生きる人々の暮らしには欠かせない存在





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posted by シマウマ-クラブ at 10:56| 九州のおすすめ